日本の高齢社会

日本は世界の中でもトップクラスの高齢社会といわれています。高齢化社会とは、65歳以上の高齢者の割合がその国の総人口の7%を超えた社会のことをさします。日本では1970年代以降に経済成長による生活様式の変化に加え、高度な医療の発展により死亡率が減り、平均寿命が延びていきました。この背景には社会福祉制度が大きく関わっています。
福祉制度
社会福祉の制度とは、社会福祉制度とは、児童、母子、心身障害者、高齢者など、社会生活を送る上でハンディキャップを負った人々に対し、公的な支援を行う制度のことです。支援を必要とする社会的弱者が心身ともに健康で、能力に応じて自立した日常生活を送ることができるように支援します。同時に救貧・防貧の機能も果たしています。このような福祉環境が整っている日本では老後の生活を社会で支えることができています。
このように高度に社会福祉制度が発達した日本のような国では、その負担を担うための働く世代が高齢化対策に追われる傾向があり、少子化が進行することでさらなる高齢化を助長していくと考えられています。
シニアの定義とは

国連では「シニア」の定義を60歳以上、WHO(世界保険機構)では65歳以上と定めています。またそのうち、65歳から74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者としています。シニアとひとくくりにしても、場所や場面、また年代によってもそれぞれに認識が異なっているようです。
実際に現在の60代や70代はひと昔前と違い、非常に元気であるという印象を受けることも多いのではないでしょうか。
平均寿命が延びている中、シニア世代が引退するにはまだ早いと考える人も多くいます。そのため、定年退職をして余生をゆっくり過ごすというスタイルにも少しづつ変化がみられています。
働くシニア

一般的に定年退職を迎える年齢は60歳です。ところが60歳以降も仕事を続けているシニアの人たちは2011年以降増加を続けています。
シニアの方たちの就業意識は高く、65歳くらいまで働きたいと考える人は13%ほど、70歳くらいまで働きたいという人は22%、そして、働けるうちはいつまでも働きたいと考える人は42%にのぼります。これらはシニア世代が元気であるということ以外にも理由があるのです。
シニアが仕事をする理由

シニアの方たちはなぜ仕事を続けたいと考えるのでしょうか。
老後の収入源として
今まで現役で働いてきた人たちは、定年によって急に収入がなくなってしまいます。今までと同じ生活レベルとはいかなくてもそれなりの水準を保とうとすると、必要なお金を稼がなくてはいけません。
日本では年金制度がありますが、現在、需給年齢が65歳からということ、そして年金支給額が減ってきているという現実があります。仕事を続けることで、年金以外にも定期的な収入が得られ、ゆとりある生活を送ることができます。
また一時期話題となった「老後2000万円問題」があります。これは、2019年に金融庁の金融審議会、「市場ワーキング・グループ」による報告書で「老後20~30年間で約1,300万円~2,000万円が不足する」という試算が発表されました。
夫が65歳以上、妻が60歳以上の夫婦のみ、無職の場合に毎月約5.5万円の不足が生じ、20~30年間の不足額が約1,320~1,980万円になるという試算に基づいた内容となっています。
「2,000万円」という金額はあくまでもモデルケースでの老後資金の不足額であり、当然人によって異なります。このような問題もシニアが働きたいと考える理由のひとつとなっている可能性があります。
生きがいとして
シニアが働く理由は収入以外にもあります。定年退職をして家にいることが多くなると、生活リズムが崩れたり、外にでることが億劫と感じ引きこもりがちになってしまう人もいます。
社会や人との接点が減っていき、なんとなく生活にハリが感じられずに過ごしてしまうということにもなりかねません。実際に、定年退職をしたシニア世代がうつ病を発症することも少なくないのです。
今までストレスと闘いながらも仕事を一生懸命に頑張ってきた人ほど、定年退職後の喪失感は大きく、これからの生活に不安を感じてしまうのです。人と接すること、身体を動かすこと、規則正しい生活を送ることは身体と心の健康維持につながります。
仕事をすることは積極的に外に出る機会を作ることができるだけでなく、身体を動かすことで体力維持ができ、仕事上で頭を使えば脳の活性化にもつながり認知症の予防にもなります。
これらの理由をみると、シニアライフのためにゆとりのある生活、健康の維持、どちらも人生を充実させるために仕事をすることを希望していることがわかります。それでは、シニア世代はどのように仕事を続けているのでしょうか。
シニアの再就職パターン

シニアが仕事を続けるにあたり、よくみられるパターンを紹介します。
再雇用制度
近年多くの企業でみられる再雇用制度は、今まで勤務していた会社に定年後も再雇用してもらうというシステムで、転職活動をする必要がありません。またこれまで培ってきた経験やスキル、人脈などをそのまま活かして仕事を続けることができるといったメリットがあります。今までのような正社員という扱いではなく契約社員、嘱託社員となる場合が一般的のようです。
勤務延長制度
定年の年齢を引き上げる制度が勤務延長制度です。企業が定年の年齢を引き上げると、国から助成金が支払われるようになりました。
そのため、この制度を積極的にとり入れている企業が増えています。定年は、だいたいが60歳と決められていますが、これが65歳、または70歳などになります。つまり正社員のまま70歳まで仕事が続けられるということになるのです。
再就職
今までの職場から離れて新たな職に就くことをさします。今までのスキルなどを活かすもよし、未経験の仕事にチャレンジするもよし、シニアとはいえ近年は人材不足の企業も多く積極的に採用をおこなっています。さまざまな雇用形態があるので自分に合った働き方を選択することが可能です。
定年退職後におすすめな仕事
シニアの仕事ではどのようなジャンルが人気となっているのでしょうか。
オフィスワーク・受付

PCなどを使った事務作業となるオフィスワークでは、書類作成や入力の仕事、また専門的な知識やスキルを活かす仕事もあります。体力に自信がないシニアにもおすすめの仕事といえます。
警備

こちらは男性で人気の警備の仕事です。イベントや交通、工事現場など現場での仕事になりますが、夏の暑さや冬の寒さ、深夜の場合もあり体力的にハードともいえます。
軽作業・製造・清掃

梱包や出荷作業など、倉庫を中心とした仕事です。近年はネットショッピングを利用する人も増えているため、大手企業でも作業スタッフを募集しているところが多くみられます。
タクシー乗務員

タクシー乗務員は60歳以上の正社員募集がある仕事です。65歳が定年、以降は嘱託社員として75歳まで働けるというタクシー会社もあります。2種免許を必要としますが、日給をもらいながら教習に通える会社もあります。
家事代行

女性に人気の家事代行スタッフの仕事です。清掃や料理など日常的な家事を中心としているため、特別な資格がなくても働くことができます。業者によっては、スタッフの教育をおこなっているところもあり、初めてでも安心です。
販売・接客・サービス

コンビニや飲食店での仕事は比較的募集が多く、未経験でも働きやすい職場といえます。早朝や深夜など、自分の生活に合った時間帯で働くことも可能です。
医療・介護・福祉

医療や介護に直接携わるには、資格が必要となります。デイサービスの送迎ドライバーなどは特殊な免許や資格がなくても働くことができる場合があります。
シニア世代の仕事はシフトが自由なパートやアルバイトも人気です。自分の希望の時間で働くことができるので、無理をせず、自分のペースで仕事をすることができます。